こんにちは。プロモデラー林哲平です。
2023年4月28日発売のホビージャパンエクストラVol.29にて「オリジナルモデルを作ってみよう!すばらしき一次創作モデリングの世界」と題し。
「再生構築機界ケルバーダイン」を題材に、0からオリジナルメカを作品世界ごと創造する方法について解説しております。
初心者向けの本になぜケルバーダインが?

今回のHJエクストラVol29の特集テーマは「プラモデル初心者に送る本」です。
「この本で新しくプラモデルという趣味を始めよう!」と手に取ったら、 最後のページで「オリジナルコンテンツを0から作る」という極めてマニアックな制作法が掲載されているので、読んで驚いた読者さんも多いのではないでしょうか?
プラモデルを作るに限らず、自分の手でモノを作るというのはすごく楽しい行為ですよね
指に触れる感触や、形が出来ていく過程、上手くいかなかったり、上手くいったり ただその形がそこにあればいい、というわけではなく 制作中の出来事や、そのとき感じたいろんな気持ち籠もっているからこそ、作品というのは自分にとって特別な存在になるのではないでしょうか?
それはアナログであっても、デジタルであっても、なにかモノを作るという行為において不変である、人間的な本能であると私は思っております
プラモデルを作る……つまり、「作る」という行為の根本なんですね
今回は趣味としてプラモデルなどの模型製作に初めて触れる読者さん向け、ということで 「日本全国どこにでもある、100円ショップでプラモ初心者でも楽しめるような記事を」ということでスタートしたのですが
最初からすでにある程度形が決まっている、すでデザインがあるメカを見立てて制作するのはちょ〜っと難しいんですよね
どうしてもパーツ数も多く、値段も高く、大きさもビッグサイズになっちゃいますし……
私も3体ほど100均モデリングでガンダムに登場したMSやMAを制作しているのですが、一番小さいのでも全高30cm、塗料や接着剤を抜いた純粋な材料費だけでも5000円を超えています
さすがにこれだとハードルがあまりに高すぎるのではないか? と思いまして

そこで、「なら、もうなにか最初からあるメカなどを作るのではなく、全部自分で考えたロボを作ってみよう!」ということになりまして
私のケルバーダインの制作スタイルをあくまで参考にしつつ、自分だけのオリジナルモデルを制作してみよう!というスタイルに着地したわけです
100円ショップで全て素材が揃うケルバーダイン「ヴァーダイン」

というわけでホビージャパンエクストラVol29用に制作した新ケルバーダインがこの「ヴァーダイン」です
こちらは制作にあたり、読者さんが制作しやすいように、担当編集氏からこのようなオーダーを受けて制作しています
(1)日本全国どこでも制作できるように、全てダイソーで入手できるパーツを使うこと
(2)工具、接着剤、塗料も全て100均のものを使うこと。もちろんエアブラシは使わない
(3)読者さんの制作ハードルを下げるために、材料費を極限まで削減すること
(4)ロボットとして作りたくようなカッコいいものであること

いや〜もうこのオーダーがもう素晴らしすぎて! 私はスケールモデルも好きで、戦史モノとかも読むのですが
まるで第二次大戦で軍から新型戦車や戦闘機の開発基準の通達のように超実戦的なオーダーに、兵器の開発技師のような気持ちになって気持ちが高揚しました♪
それでは、制作ポイントを解説していきます
パーツ、工具、接着剤、塗料も含めて「3000円」




まず、ヴァーダインの総制作コストは3000円です
パーツ1000円
接着剤500円
工具800円
塗料700円
私などはあまりにも長くプラモデルを作っており、工具や塗料が手元に当たり前のようにあるため、意識せず忘れてしまうこともあるのですが
プラモデルをちょっとしっかり作るとなると、キットの値段に+して、工具、接着剤、塗料の値段も必要になるわけです
今回はあえて制作部材に制限をかけているので、普段から模型をされている人であれば1000円+塗料代と少しぐらいで制作可能ではないでしょうか?
プラモデルであればキット代にあたる価格を1000円にしているのは、現在日本のプラモデルで最も入門的なキットである、ガンダムSEED以降のTV主役機ガンダムの前半主役機の1/144キットが約1000円ぐらいの価格設定であることが多いので、そのあたりが模型入門のギリギリのラインなのではないか? と私は考えているためです
全てダイソーのパーツで構成しているので、ちょっと売り場で部品を探す手間はかかりますが、実質ヴァーダインのプラモはダイソーで1000円で販売されている……というイメージしていだだけると私としては嬉しいです
ヴァーダインの詳しい制作法はホビージャパンエクストラVol29の記事を見ていただくとして
ただ、さすがに説明無しで「この素材を使え!」というのは不親切であるので、ここからは個人的にオススメな、工作初心者さんが使いやすいダイソーのマテリアルを3つ、その理由と共に紹介したいと思います
オススメアイテムその1 洗濯バサミ



まず、オススメなのが洗濯ハサミです
こちらはダイソーで売られている最も安い洗濯バサミですが、なんと100円で40個も入っています
洗濯バサミはリング、左右のパーツと分解できるため、実質的に100円で120個もパーツが手に入るのです
そしてなにより、洗濯バサミはディテールが秀逸なため、メカのパーツとしてデザイン的にすごく使いやすいんですよ!
洗濯の保持力を高めるための滑り止めはまるで戦車の凸リベットさながですし
金属リングを通すスリットの位置もメカニカルな印象を強調してくれますし
価格帯、用途、またセリアや他のホームセンター、スーパーなどで売られている違う銘柄の洗濯バサミごとにもデザインに違いがあり、極めて多くのバリエーションがあるので工作の洗濯肢がとにかく幅広いんですよ
ケルバーダイン制作には欠かせないアイテムです
オススメアイテムその2 使い捨てヒゲソリ



2つ目は使い捨てヒゲソリです
数本入っており、柄の滑り止めがメカニカルなディテールなため、腕や足などいろんな部分に使えます
また、先端の刃の部分はスリットやラジエーター、排気口などに使えるため、一本で二種類の素材として使えるのが嬉しいところ
私はこの柄が丸いタイプを愛用していますが、販売時期やメーカーによっては同価格帯で柄が四角いものや、一本入りですがディテールがより有機的なものなどバリエーションも豊富です もちろん、ヒゲを剃ってから使って全然OKです♪
オススメアイテムその3 アルミワイヤー



3つ目はアルミワイヤーです
100円ショップなどの日用品を組みたてて工作するとき、最も大きいハードルとなるのが作品の強度です
塗装や工作、接着などを前提としているプラモデルはおおむね加工がしやすいスチロール樹脂で作られていることが多いのですが、日用品は実際に繰り返し使うものですから、強度が高く頑丈で、かつ汚れが付着しにくいポリプロピレン製のものが多いのです
汚れが付着しにくい……つまり、接着剤も効きにくいため、なんとなく接着しただけだとちょっとした衝撃で壊れてしまうんですね
私も10年前に最初のケルバーダインを作ていた時代はどれだけすぐバラバラになったことか…… これを防いでくれるのがアルミワイヤーです
中に芯として通しておき、そこにパーツをくっつければポリプロピレン同士だけの接続ではなく、ワイヤーの摩擦強度も含めた接続になるため、ずっと壊れにくくなるんですよ
ガンプラのマスターグレードの内部フレームを極端に単純化したようなものだと思ってください
この工程は旧キットにアルミ線を組み込んだ作例を作っているときに思いつきました
https://hjweb.jp/article/873642/
ヴァーダイン構築完了!でも、100均アイテムだけで塗れるのか…?

ヴァーダインの構成が終わった塗装前の状態
洗濯バサミとヒゲソリのパーツが外装のほとんどを占めているのをご確認できるでしょうか?
私も最初は「使える部品が少なすぎるから上手くできるかな……?」と、制作前はちょっとドキドキだったのですが
あえて使うパーツを絞り、同形のパーツを多様して構成するほうがデザイン的な統一感が生まれるんだな〜と改めて勉強になりました これは、普段ガンプラのミキシングでやっている、同じメカデザイナーさんの描いたMSのパーツを使って構成すると「それっぽく見える」のと同じなんだな〜と
ここで、塗装に入るわけなのですが……
「ダイソーで手に入るアイテムのみで塗装する」
最後にして最大のハードルです
「これ……いくらなんでも無理なんじゃね?」
私は今まで100均モデリングやケルバーダインの制作では、ほぼエアブラシを使って塗装していました
私は模型の仕上がりというのは塗装が非常に重要なポイントであると考えているので、塗装しにくい素材で構成するぶん、塗料や工具はいいものを使っていたわけです
「週末で作るガンプラ凄技テクニック」シリーズでエアブラシを使わない縛りでガンプラを作り慣れているとはいえ、ダイソーでプラモに使うために塗料とか買ったことが無いので、どんなもの売っているのかもわかりません
昔、ビグザムとかジオを作るときに大量のマーカーを買ったことはありましたが、あれは塗装用ではなくプロペラントタンク用でしたし……
ヴァーダイン塗装前に人生の一大事が起きました
と、いろいろ悩んでいるときに、私にとって大事件がおきました
徳島の実家の父が急に倒れ、亡くなったのです 本当に急なことで、もうとにかくショックでした
コロナが始まって以来帰れなかった実家に3年ぶりに戻り、母や親族に会い、葬儀をして……
川越に戻ってきてからも、常に頭がしびれるように痛み、全く模型に集中できません
私にとってプラモは食事や睡眠のようなものですから、作れなくなる、というのは生まれて初めての経験でした
このとき、職場であるホビージャパン編集部のみなさまが本当に気を使って優しくしてくれて、無理なく体調や心を最優するように言ってくれて、休養期間をいただけたのは本当に助かりました 本当に、感謝しかありません
おかげさまで、父の49日を迎える頃にはなんとか持ち直すことができました
父の49日に納骨のため、3月後半に家族で再び徳島の実家に行きました
37年前には曾祖母の骨を祖父が入れ
17年前には祖父の骨を父が入れ
今度は私が父の骨を墓に入れました
「次はお前がここにお父さんを入れる番がくるからしっかり見ておきなさい」
と9歳の息子にお墓の仕組みを詳しく伝えて
納骨を終えて実家に戻ってきて、ふう、と、なにか全身の力が抜けたようにと一息ついて
ほんの少し、自分の時間が出来たので、家の中をフラフラしていると

気がつくと廊下の奥にある、30年前からそのままになっている、小学生の頃作ったプラモの飾り棚の前に来ていました
ゴブリンとかBクラブショップ通販で到着するまでめっちゃ時間かかったよなあ、とか
プラモ狂四郎読んでタミヤのティーガー1作ったなあ、とか
BB戦士が3体買えるゲパルトとエイブラムスに1500円払うのは勇気必要だったなあ、とか
ハセガワの262とかモットリングが筆だと限界があったなあ、とか
もう、ただひたすらに、心を癒やすために過去の思い出にすがって、懐かしんで浸りきっていたのですが……
そのとき、棚の一番奥に、これを見つけました
33年前に制作した「ケルバーダイン第0号」が答えを教えてくれる

小学生の頃、ちょうど今の息子と同じ9歳のときに作った、オリジナルの宇宙船、いわばケルバーダイン第0号です
私が小学生の頃、毎月学校にやってくる学研のおばちゃんから「学研の科学」「学研の学習」を定期購読していました
記事内容的に私は圧倒的に「学研の科学」派だったのですが、どちらの本の付録か覚えていないのですが「小学生ホビー特集」のような小冊子がついてきたことがあったのです
学研の本といえば勉強メインですが、その小冊子は当時の最新ホビーを紹介した娯楽的な内容でした
ファミコンだとドラクエⅣやマイト・アンド・マジックとか、プラモだとバンダイ最新キットである1/100 F90とか紹介されていていました
その中に「SFメカをオリジナルで作ってみよう!」という記事があったんです
「牛乳パックにプリンカップやいろんな身の回りのものをくっつければ形ができるぞ! 色は黒いスプレーを塗って角を銀に塗ればなんだってSF風にカッコよく見えるんだ!」
という記事内容と作例が掲載されていて「これならできる!」と見ながらすぐに作ったんですよ
牛乳パックにお菓子の箱を積んで戦艦風に段差をつけ、サイドにはプリンカップを装着 ディテールには小学Ⅰ年生の頃流行っていて、走らせすぎて壊れたダッシュ四駆郎時代のミニ四駆のシャシーを分解し、モーターや電池、ギアをセロハンテープで装着しています
黒は町の金物屋に売っていた補修用スプレーのブラック使用
シルバーは図工の授業用の水彩絵の具を使っています
答えは、30年前の自分がすでに出していました
エアブラシが無くても 地方の田舎でプラモデル用の専用の塗料や手に入りにくくても お金が無くて欲しいパーツ手に入らなくても そのあたりにあるもの全てを使って自由に工作することが自分のルーツであり、ケルバーダインであると
ダイソーの塗料だけで日用品を塗る!

小学生の頃出来たんだから、絶対なんとかなるだろう、と考え直してダイソーの塗装コーナーで塗料を改めて探してみました
最も悩んでいたのが、基本塗装です ヴァーダインの外装はほとんどは汚れがつきにくいポリプロピレン製の洗濯バサミ
普通の塗料などすぐに剥がれてしまいます
「ああ、このダイソーのスプレーが超強力スプレーならなあ……」 と、日曜大工コーナーに売られていた補修用スプレーの素材欄を見てみると……?
「ニトロセルロース」とあるではありませんか!
ダイソーの缶スプレーはプラモデル用の「ラッカー系塗料」とは違う、溶剤が強力で食いつきも良く、金属とかにも定着する本家本元ガチラッカーだったんですよ
金属モデルに使うマッハ模型の鉄道カラーとか、ニトロセルロース系でしたよね
ニトロセルロース系の塗料は定着力が強いぶん、溶剤成分が強く、プラスチックなどの樹脂パーツの表面を溶かすため、繊細なディテールを活かす必要があるプラモデルに使うのは難しいのですが
私は100均一モデリングをするとき、表面が溶けてるのも「これは鋳造表現的なディテールである」と「味」ということにして制作しているので、むしろこれぐらいのほうがちょうど良かったりするんですよね
それにしても、まさかこんな身近にこんなに安く黒いラッカー塗料が売っているなんて……そういやT型フォードとかも「一番安くて塗料がすぐ乾いて生産性がいいから」という理由で黒い塗料使ってましたね。
あの時代はまだラッカー塗料とか発明される前ですが…

黒い塗料を1日くらいかけてしっかりと乾燥させてから、壁塗り用の水性ペイントのホワイトで全体にウォッシングして使い込んだ感じを出しつつ 油性マーカーのシルバーで全体にドライブラシをかけていきます
普段プラモを作るときは銀ピカにならないように、銀ドライブラシはいざ失敗したら拭き取れるようにエナメル系やアクリル系を使っているのですが 油性マーカーだと失敗した場合拭き取るのが困難なため、一発勝負なんですよ
昔、どれだけドライブラシでジャーマングレーの戦車をライトグレーにしたり、黒いメカをシルバーにしたことか…… ただ、これ使ってみて初めて知ったんですけどダイソーの油性マーカーシルバー、めちゃくちゃメタリックの粒子が細かくて輝きが強いのでビックリしました
小学生の頃の自分であれば、確実に初期センチュリーシリーズみたいな銀塗装になってましたね(笑)

銀ドライブラシが終わって、かなりいい感じのSF感が出てきたのですが、なんかこう、もうちょっとアクセントが欲しい! というわけで気になったのがヒゲソリの柄の部分の凹部分です
でも、こういう部分て塗り分けると絶対はみ出すんですよね 私ははみ出さずにキレイに筆で塗り分けるというのが超絶苦手ですので、なんとしても拭き取れる塗料を使わないと塗り分けがビヨビヨになってしまいます
ここで見つけたのがポスターカラーの赤 黒が下地で発色しにくいので、もう薄めずにツマヨウジで直接刷り込み はみ出した部分はツマヨウジでこそぎとり、それでも残った部分は水道水で拭き取ってリカバリーしたらなんとかなりました
思った以上に便利だったので、これからは自分の塗料レパートリーに入れようと思います


完成したヴァーダインを33年前の0号と比べてみました
なんかもう、やってることがあまりにも昔と変わらなさすぎて自分でもビックリです
学研の小冊子に書いていた「どんなものでも黒く塗って角を銀で塗ればカッコいいSFメカになるぞ!」は偉大ですね どんなモデラーさんが記事を書いていたのでしょうか? さすがに、あの小冊子はもう家にも残っていないんですよね
いつか、もう一度読んでみたいものです
オリジナルモデルに必須である「設定」の作り方が記事のメインコンテンツです

と、ここまでヴァーダインのを制作中にいろいろあったことを語ってきましたが…… ホビージャパンエクストラVol29の記事を読んでいただいた人にはおわかりのとおり、ケルバーダインの作例はあくまでオマケにすぎません
記事ではオリジナルモデルにおいて極めて重要な、「設定」を考え、そして運用するための方法論を私なりに解説しています
本の記事タイトルはそもそも 「自分だけのオリジナルモデルを作ってみよう!素晴らしき1次創作モデリングの世界」です
ところで「1次創作ってなに?」と聞き慣れず、あまり知らないモデラーさんも多いと思うのでご説明しましょう
まず、模型や同人誌ではあたり前である「二次創作」
これは誰かが創作したキャラクターや世界設定を使ってなにかを制作することです
たとえば、私は昔、MGマラサイと高機動型ザクをミキシングして「高機動型マラサイ」を作ったことがあるのですが、「高機動型マラサイ」はもちろんZガンダムの設定には存在しないので、これは自分がガンダム世界を借りて制作した「二次創作作品」となります
二次創作作品はその作品やキャラクターが多くの人に知れていますから、その作品の人気がそのまま作品に上乗せされるため、その作品が評価されやすいんですよ
1次創作というのはそういったものを使わない、自分で考えたオリジナルの作品です
そして、新しいオリジナル作品というのはすでにある作品とくらべて、大きな弱点を抱えています
それは「キャラクター性の弱さ」です
たとえそのロボットやキャラクターどれだけデザイン的に優れていて、見た目が一般人受けしても……
何なのか? 誰なのか? 未来の兵器なのか? 異世界の鎧なのか? ゲームのユニットなのか? 有人機? 無人機? 大きさは? どう戦う? どうやられる? どう開発された? というような歴史……
つまり、その作品にまつわる「物語」が無い、キャラクター性においては生まれたての赤ちゃんのような状態なのです
つまり、1次創作作品はただ作品を作って出しただけでは極めて評価されにくいのです
我々モデラーがプラスチックの塊で成形された物体をなにかの「プラモデル」であると認識するのはそのもののキャラクター性ゆえです
それは実物のあるスケールモデルでも、架空の存在を立体化したキャラクターモデルであっても変わりません
設定を加えるというのは、なにものでも無いオリジナルモデルに歴史という魂を吹き込む行為なのです
ですので、記事では実際の工作以上のパートを割いてに「設定を考える方法」を解説しているんですよ
自分の仕事は、その先につながっているのだろうか?

それにしても、今回の記事はいろいろ人生のイベントが重なって、思い出深いものになりました
このホビージャパンエクストラVol29の担当編集氏は私が10年前ダンボール戦機のHOWTOをやっていたときの読者さんで、その頃はLBXの教科書を友だちと囲みながら、プラモデル製作を楽しんでいた、と嬉しそうに話してくれました
なので、扉のカットはLBXの教科書の表紙に合わせて撮影していただいたんですよ!
私が常々思っているのは、本やコンテンツ、会社や家族というものはそれを愛する人により継承されていくものであるということです
私が2005年にホビージャパン編集部にバイトで入ったばかりのときはもう、先輩のみなさんや、会うモデラーさんに昔のエピソードを聞きまくっていました
「あの作例は到着遅くて大変だった、でも最高の出来栄えだった」
「実はあの作例、ペンネームで俺が作ったやつだったんだよ」
「え?そんなの作ってたっけ?忙しすぎて覚えてない」
「これ、テストショットが赤かったから白く塗り直すのが大変だったんだよ」
「これが表紙になったのは、その月で一番出来が良い作例だったから」
そのとき先輩方もさらに昔のホビージャパンを読んでいて、「これが自分が一番はじめに買ったホビージャパンだったんだよ」みたいな話を嬉しそうにしてくれるんですよね
なので、「自分が作った作例や記事がきっかけで、いつかホビージャパンに来てくれるような人が現れるんだろうか……?自分の仕事は次の世代につながっているのだろうか?」というのが、モデラーとしての自分にとっての最大の課題だといつも思っていたんですよね
例えば、ホビージャパン編集部の資料棚に入っている、藤田一己氏直筆のタイラントソードの設定資料の場所であるとか、もちろん先輩から場所を教えてもらっているからこそ知っているわけで、もし、そこでなにかしら伝承が途切れた場合、誰も覚えている人がいなくなり、失われてしまうわけですよ
私が特殊な構造の我が家の墓に父の骨壷を入れることができたのは、祖父や父に教わっていたからです。それは息子に伝えることができましたが、プラモを作るという文化は果たして誰かに伝わっているのだろうか?と
ホビージャパンエクストラVol29では当時のダンボール戦機担当で、オーディーンMkⅡとアキレスD9のようにタッグを組んで一緒に仕事をしたフミテシ氏もたくさん記事を執筆されていて
あの時ミゼルオーレギオンに二人で立ち向かった結果は今果たされたんだなあ、と本を読み返しながら感慨にふけっているわけです
ホビージャパンエクストラVol.29をよろしくお願いします

というわけでホビージャパンエクストラVol29掲載記事「オリジナルモデルを作ってみよう! 素晴らしき1次創作モデリングの世界」の解説でした♪
ケルバーダインを始めて10年。
昔、新聞に掲載していただいたことはありましたが、私の大好きなホビージャパンの本にしっかりとした記事として掲載していただけたのはもう、本当に嬉しいです

最後の特撮カットはカメラマンさんにいろいろお願いして、超カッコいい写真を撮っていただけたので、ぜひ実物を目にしていただけると嬉しいです
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