ケルバーダイン ブリアード ガットスレイヤー(AD2325年製)バトルストーリー第二話『二人の母』

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ブリアード ガットスレイヤー バトルストーリー(AD2325年『2人の母』)

ガットの一撃を受けた仲間のケルバーダインがバラバラに砕け散る。

メスのガットが箱庭都市グロッフに住み着いて半年間。

もうすっかり見慣れた光景だ。

第四次ガット討伐戦に参加したケルバーダインは35機。

これで、残りは私の騎乗しているブリアードだけになった。

左腕は千切れ、RICもほとんど剥がれてしまった。

立っているだけで奇跡だ。あと数分もすれば、何もしなくても元のゴミに戻るだろう。

作戦は成功したのだ。

ガットの幼体をおびき出し、それをエサに母親である成体を狩る。

これまで3回の討伐失敗、69機のケルバーダインと数百人もの仲間の命を引き換えにして得た最適解は間違いではなかった。

度重なる攻撃でガットは疲労困憊し、満身創痍だ…… 右前足は折れ、尻尾は千切れ、三角形の耳はいびつに歪み、体のいたるところにケルバーダインの部品が突き刺さっている。

だが、それでもガットは倒れない。

すでに命を失っている我が子を背後に守りながら。

片方しか残っていない、怒りで瞳孔が開ききった瞳から放たれる視線には物理的な圧力すら感じる。

ふと、偵察中に見た、子に乳を与えていたガットの姿を思い出す。

ガットは再生構築機界最強の生物だ。

だが…… 決して倒れぬその力は、母という存在の持つ根源的な強さではないだろうか?

私にはわかる。

私も彼女と同じ、母であるからだ。

私が倒れたら、上の2人の娘と同じく最後に残った息子もガットのエサになるだろう。

25年前、母は命と引き換えにギチから私を救ってくれた。

だから、次は私の番。

ブリアードはボロボロだが、不思議と動きは軽い。

騎乗時間の限界を超え、ケルバーダインともう分離できないほど融合が進んでいる証だ。

ガットの視線を跳ね付け、睨み返す。

視線がぶつかった瞬間、ガットが飛んだ。

反応する間も無く、激しい衝撃とともに地面に叩きつけられる。

ガットは私を地面に押さえつけ、その鋭い牙で確実にトドメを刺すことを選んだのだ。

大きく開いた口にズラリと並んだ牙が、ブリアードをバラバラに砕く瞬間。

ガットの喉奥に右腕をねじ込み、パイルバンカーを叩き込んだ……

ブリアード ガットスレイヤー 機体解説

 ケルバーダインの誕生により、人類はギチやザンティスなどの大型肉食昆虫を駆逐可能となり、間近に迫っていた絶滅を免れた。

 だが、昆虫よりも高等な小型脊椎動物……

 素早く、強靭な牙を持ち、繁殖力の強いロデラ。

 地中を掘り進み外壁を無視して居住区に侵入するマオルなど。

 知能が高く、動きが俊敏な小型哺乳類を相手取るには、グルヌのような最初期に開発されたケルバーダインでは根本的に機動力が足りず、対応するのが困難であった。

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 ケルバーダインによる大型肉食昆虫の駆逐により、本来それらを常食としていた小型哺乳類は新しい主食としてケルバーに目をつけた。

 明確にケルバーをエサとして付け狙う小型哺乳類の増加が2320年頃には大きな問題となっていたのである。

 小型哺乳類に対抗するべくケルバーダインも常に強化、改良が繰り返されたが、ロデラやマオルを撃退可能となっても、まったく敵わない再生構築機界最強の生物が存在した。

 ガットである。

 大型のものでは尻尾まで含めて、当時のケルバーダインの平均的な全高である20cmの3倍以上を誇る70cmにも成長した。

 1〜2mの高低差を軽々と跳躍、疾走スピードは瞬間時速48kmに達する。

 強靭な肉体を持ち、鋭い爪が突き出た強靭な腕の一撃を受けるとどんなケルバーダインであってもバラバラになった。

 ガットはケルバーにとってはライオンにも等しい、ギチやザンティスなどの昆虫を捕食するロデラを主食とした。

 まさに生態系の頂点に君臨する生物であるのだ。

 再生構築機界において、ガットの縄張りに入るのは死と同義語なのである。

 幸い、ガットは自分の縄張りからはほとんど出てこないため、その禍々しい爪の研ぎ跡を見ればケルバー達にとってガットを避けることはそう難しいことでは無かったのだ。

 だが、西暦2325年の春。

 ターンオーバーデイの崩壊を免れ、ケルバーたちの最重要拠点となっていた箱庭都市グロッフにあろうことか一匹のメスのガットが住み着いたのである。

 ガットは子を生み、ケルバーをエサとして、また子ガットの遊び道具として与えた。

 メスのガットは、子育てに安全な場所であるとして箱庭都市を選んだのだ。

 グロッフには残り少なくなった人類の肉体も数多く保管されていたため、これを無視することはできなかった。

 ガットがグロッフに住み着いていた半年間で計104機のケルバーダインと500人を超えるケルバーが犠牲になったと記録されている。

 ガットを討伐する…… その難題を叶えるために開発されたのがブリアードなのだ。

 右腕に装備された「TZFパイルバンカー」。
 
 ガットは分厚い毛皮を持ち、当時のケルバーダインの射撃兵装ではダメージを負わせることは不可能であった。

 内蔵に到達し、致命傷を与える貫通力を持った武器としてパイルバンカーが選ばれたのである

 左腕に装備された「4連装TGMランチャー」

 ガットはシルバーバインという植物の実に含まれる成分を嗅ぐと、酩酊し、動きが鈍くなる習性がある。

 連装ランチャーにはその成分を抽出した煙幕弾が装填されている。

 ブリアードの脚部には高速移動可能な「MGXホイール」が装備されている。

 ガット討伐において、最大の問題はその跳躍力であった。

 ガットは最大1.5mもの段差を軽々と跳躍するため、崖の上や下に逃げられるとケルバーダインでも手も足も出ない。

 そこで、建造物や段差の無い平地であるグロッフ中央公園におびき出し、ガットの跳躍力を無効化する作戦が取られたのだ。

 「MGXホイール」によりブリアードは最大瞬間時速30kmで平地を走破可能であり、これはシルバーバインで弱体化されたガットにかろうじて追いつくことが可能であると計算された速度であった。

 ガット討伐戦は困難を極めた。

 3回に渡るガット討伐戦の失敗を活かして開発されたブリアードは第四次作戦にて初投入。

 多大な犠牲を払いながらも、ブリアードのパイルバンカーに脳髄を破壊されたガットは二度と起き上がることは無かった。

 ブリアードの騎乗者も相打ちとなり死亡したものの、史上初の「ガットスレイヤー」として。

 現在は王都リザレクティアと名を変えた、かつてのグロッフ中央公園の中心地にその功績を称える記念碑が建造されている。

「ブリアード」という名称は箱庭計画以前に絶滅した、かつてガットの天敵とされた生物である、「犬」の品種により命名されている。
 
 ブリアードはグロッフをガットから取り戻した名機として、主にリザレクト勢力圏内での人気が高い。

 幾度ものモデルチェンジを繰り返しながら、西暦が終わり再生構築歴となった現代でも生産され続けているのだ。

 ブリアード ガットスレイヤーの再生構築過程と旧設定はこちら

https://promodeler.net/2012/04/10/kdd0401/

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この記事を書いた人

徳島県三好市三野町生まれ
2005年より模型専門誌月間ホビージャパン編集部に所属
プラモデルを作る専門家「プロモデラー」として、公私共に3000体を超えるプラモデルを制作
プラモデル技法書「ガンプラ凄技テクニック」シリーズ6冊を執筆
「誰もが、思い切り自由に作れる作れる模型」をテーマに、ケルバーダインの制作、普及活動に奮闘中

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