ケルバーダイン グロッド(AD2349年製)バトルストーリー第三話『過ぎたる力』

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グロッド バトルストーリー(AD2349年 『過ぎたる力』)

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赤銅色に輝く鉄塊の一撃が、直径30cmの巨岩を打ち砕く

飛び散った破片が降り注ぐ中、見物していたケルバーたちがあわてふためく

頭を押させてしゃがみ込むもの

そこに足をひっかけて、転げまわるもの

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「モールタイプ」はそもそもパワー重視のケルバーダインだ

だが、それでもこのケルバーダインは異常だ

金属のような塗装が施されており、目立ちすぎる

これでは反射光で野生動物にすぐ発見されてしまう

まったくの無意味、馬鹿な若者の遊びでしかない

だから、見物人の誰もが「岩をも砕く」というデモンストレーションが成功するとは信じていなかった

ーグロッドの騎乗者と設計者の二人以外はー

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「やったぞ!見ろ、シェラルド!あのあわてふためくヤツラを!火炎放射器をブチこんだギチみたいに散らばっていくぞ!」

「ダメだ。まだ全然パワーが足りない。本来ならもっと岩は粉々に砕け散るはずだ。破片が大きすぎる」

「これでもダメなのか? このピカピカ塗装は凄いぞ! 力が湧き上がってくる! これなら俺一人でガットだって狩れる!」

「『メタリックカラー』だ。帰るぞ。ボディを磨き直して再塗装する」

「またアレをするのか?俺はもう嫌だ! ゴミをヤスリで磨くだけの男にはなりたくない!」

「お前が適当に磨くからキズやホコリがついてメタリックカラーの完成度が落ちているんだぞ。なにが男だ。ケルバーに男も女も無い。お前は巨人時代に退化している」

「いやだ!」

「ダメだ。帰ったら裸で作業しろ。服を着るとホコリが舞うからな」

「いやだああああああああ!!!!!!」

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赤銅色の金属色に輝くケルバーダインが、肩に乗せた小柄なケルバーの叱責にビクつきながら去ってゆく

混乱からようやく平静を取り戻した見物ケルバーたちがその後ろ姿をただ唖然として見送る中、

誰かがぽつりとつぶやいた

「この力……何に使うんだ?」

800年以上前、生身の巨人たちは金属で出来た「鎧」を着て互いに争ったという

もう、よほどの辺境でも無い限り、昔のように動物のエサになることもなくなった

岩をも砕くその力は、一体誰に向けられるのか?

グロッド 機体解説

 

 野生動物の驚異が弱まり、ケルパー人口が増加していく2340年後半に登場し、ケルバーダインの発展に大きく貢献したのが「テペ−ニンの再来」と謳われた再生構築士であるシェラルド・グベインである。

 地中から防壁を無視して襲来するマオルなどの小型哺乳類を撃退する対地中型ケルバーダイン「モールタイプ」開発もさることながら、彼の初期の功績は「RIC(REAL IMAGENATIVE COATING リアルイマジネイティブコーティング)」の理論を確立したことにある

 初期のケルバーダインは全般的にグレー寄りの地味な色で塗られていることがほどんどだった。

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 これは元々ケルバーダインは主に野生動物を討伐・駆除するために作られたものであり、動物からの視認性を下げる塗装が効果的であだったからだ。

 だが、ガット討伐戦に投入されたブリアードなどの解析や、数々の戦いを得たケルバーの経験則から、同じケルバーダインでも彩色により性能が変化することが次第に明らかになった。

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 これはケルバー素体の持つ本能的な習性によるものであったのだ。

 ケルバーの開発者であったH・テペーニン博士は20世紀後半から21世紀中盤にかけて流行した、プラスチック製の組み立て模型「プラモデル」の熱烈な愛好者であった。

 テペーニン博士はケルバーの構成要素の中に、自分の趣味を好むという要素を与えていたのだ。

 そのため、「プラモデル」でかつて高く評価されていた塗装で美しく塗り上げられたケルバーダインに騎乗すると、ケルバーの意識が高揚し、ミキシンクロレートに頼らない性能向上が見込めるのだ。

 シェラルドはこの効果を「RIC」と命名。

 自身が開発したモールタイプのケルバーダインの改修型であるグロッドに、当時は不向きであるとされた金属的な彩色「メタリックカラー」を施し、デモンストレーションではそれまでのケルバーダインとは桁違いのパワーを見せつけ、その効果を実証した。

 グロッドは後にミキシングワールドで広く購読されているケルバーダイン専門誌「ケルバーダインジャーナル」が開催するコンテスト「KDMC(ケルバー・ダイン・ミキシング・コンペティション)」の大賞を受賞。

 RICの概念は広く再生構築機界に知られることとなり、ケルバーダインの彩色が多様化していくきっかけとなったのである。

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 グロッドの旧設定と再生構築過程はこちら

https://promodeler.net/2012/10/12/kdm0901/

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