ケルバーダイン リュードラ(製造年不明)バトルストーリー第21話『(MC0041年)騎士と詩人』

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リュードラ バトルストーリー『(騎士と詩人(MC0041年)』

リザレクト南西部に位置する、ピエム村
ミキシングワールド各地に散在する、典型的な開拓地だ
普段なら、夜が更けたらすぐに静かになる村の広場は、今はケルバーたちの気配に満ちていた

広場の中心には、ボロボロのマントに帽子を被り、仮面をつけたケルバーダインがギターを鳴らしながら詠っている

「これより奏でるは戦いの詩

3度の因縁の戦い、純血の騎士と白亜の蟷螂の物語

一度は深き森で引き分けた
二度は防壁の上で引き分けた

最後の戦いはリザレクティアの奥深く、巨人の肉体眠りし古の棺
人類肉体保管庫「ヴァリス・マリネリス」

巨人の肉体を滅ぼさんと、黒き巨竜ヴァーダインが暴虐の限りを尽くす
悪魔の化身を阻止せんと、純血の騎士ヴラドはプロージェで追う
それを阻むは白亜の蟷螂、リオレラのエグザンティス

三度立ちふさがり、刃を交える運命のとき

エグザンティスのPGVナイフが五月雨のごとく降り注ぐ
プロージェLのHNGランスが熱を帯び、猛烈な突きを繰り出す
槍と刃の火花が散る
両者は一歩も引かない
エグザンティスはPGVナイフの刃を折り、新しい刃を補充する
血のように赤い光で満ち、ギザギザのモールド入り乱れた壁に4本の足をひっかけて

白亜の蟷螂は縦横無尽に動き回る
この場所では、虫の姿のエグザンティスに利がある
降り注ぐ刃を純血の騎士はひたすら弾く
だが、ついに右腕のHNGランスを断ち切られてしまう

ついに命運尽きたのか?エグザンティスはトドメをささんとに襲いかかる

純血の騎士は諦めない
エグザンティスが折った刃を掴み、思い切り前に突き出したのだ

不意をつかれた攻撃に、エグザンティスのゼノアイが傷つき、一瞬の空白が生まれる
そのスキを純血の騎士は見逃さない

絶たれた右腕のHNGランスを左腕のクローでつかみ、エグザンティスへと投げつけた!
その一撃が決定打となった
エグザンティスの胴体は2つに分断され、地面に落ちた
おぞましい悲鳴をしばらくあげてもがいたあと、白亜の蟷螂は動きを止めた

純血の騎士は、エグゼクト第8軍のエグザンティスを討ち取り
三度の戦いの決着をつけたのだ!」

村人たちはその語りに息を呑み、湧き、どよめきをあげる

「白亜の蟷螂が死んだのは本当だったんだな!」

「さすが純血騎士団だ!あの恐ろしいカマキリ野郎をやっつけた!」

子どもたちも大喜びだ

「バーン!われこそは純血の騎士!プロージェだあ!」

「ねえ、純血の騎士さまのことをもっと教えてよ。もっと詳しく!」

そこに、突然、一際冷たい声が割って入った

「そうだな。吾輩も聞きたい。なぜ、貴公はリオレラとの戦いをそれほど詳しく知っているのか」

!!!!!!!!!!!!!!!!!!

村人のどよめきが、一瞬にして静になる
詩に夢中になっている間に、広場の周りをリザレクト軍のケルバーダインが囲っていたのだ
その中心には、銀色に輝く、絢爛豪華な装飾の施されたケルバーダインが堂々と佇んでいる
詩の主役……純血の騎士ヴラド・ブイヨンのプロージェが忽然と現れたのだ

「我々ゼオルーン族は何でも知っているのです。このミキシングワールドに起こったことはすべて」

詰め寄るヴラドのプロージェに、だがしかしギターを掻き鳴らすケルバーダインは一歩も引かない

「御託など聞きたくもない。この村に怪しげなケルバーダインが入ったと情報があった。貴公のことだ。怪しいどころではない! エグゼクトのスパイなのか? どこでその情報を知った?」

「この目で見たからですよ。私達は全てを見て、聞いて、伝える。それがゼオルーンの教え……」

「センチネエエエエエル!!!」

ヴラドはゼオルーン族の言葉が終わる前に、ギガセンチネル教の聖句を唱えながらHNGランスを振るう

「おや、ゼオルーン族への攻撃はご法度ですよ?」

ギターのケルバーダインはHNGランスを僅かな動きで避け、飄々と、しかし面白げに、ブラドを非難する

「問答無用!」

ヴラドは槍を突き出し、クローを振るって猛攻をかける
エグザンティスを仕留めたその動きを、だがゼオルーン族のケルバーダインは最小限の動きで軽々といなす

「貴公、何者だ!」

「私は名もなきゼオルーン族ですよ。このリュードラと共に旅をしているだけです」

「何者だと聞いているのだあああああ!!!」

最後に繰り出された、ヴラド必殺の突き

リュードラは高く飛び上がり、ランスの上に着地

赤熱した柄をジュッと音を立てながら滑り、プロージェの懐にもぐりこむ

そして、ケルバーダインの急所である腹部接合部にギターの先端を当てた

「これまでにしませんか?あなたも本気でないでしょう?」

突然始まった戦いに気を取られていたヴラド率いるリザレクト軍も、ようやくリュードラに銃口を向け、臨戦態勢を取り始める

「もうよい。わかった」

ヴラドはプロージェの体を緩め、もう戦意の無いことを部下たちにも伝える

「なぜ、これほどまでに吾輩の動きを読める?」

「言ったはずです。見ていたからですよ。純血の騎士の素晴らしき戦いを!」

リュードラはギターを奏で、高らかにヴラドの戦いを称賛する

そこで、ふと、村人たちが呆然としているのを見て、我に返ったようだ

「みなさん、ごめんなさい。平和な村を乱してしまいましたね」

リュードラは、自分がやりすぎたことを反省し、村人たちに謝罪した

「長居しすぎました。私は南へ向かいます」

「まて。貴公、名前は何という?」

「私はただの詩人です。呼びにくいのが困るのであれば、ゼオ、とそう呼んでください」

リュードラが村を去る時、ヴラドはその背中を見つめつづけていた
疑問が頭から離れなかった


ゼオルーン族が情報通なのは当たり前だ、だが……


「戦いの流れを知っているのは不思議ではない。吾輩もおおいに吹聴した。だが、ヴァリス・マリネリスの壁がギザギザモールドになっていると、なぜ知っているのか…? 吾輩もヤツの詩を聞くまで忘れていた。あの中は、ミキシングワールドでも限られたものしか知らないはずだ……」

疑問が頭から離れなかった
ゼオと名乗ったケルバーが向かう南にはうらぶれたハンドレッド、ダー・イソー139があるだけだ。
そんなところに、一体なんの用があるというのか……?

リュードラ 機体解説

リュードラはエグゼクト10氏族の一つ、ゼオルーン族が使用するケルバーダインである

ミキシングワールドでは電波による情報伝達が不可能である

このため、事件や情報を各地に伝える役割は技芸を得意とするゼオルーン族が担っている

彼らは各地を旅し、音楽を奏でながらケルバーたちに様々な物語を詠うのを喜びとしている

ゼオルーン族のケルバーダインは一般に楽器を装備しているのが特徴である

このリュードラはギターを装備しているが、太鼓やシンバル、ラッパなど、多様なバリエーションがある

ゼオルーン族が集まり、演奏会を開くことも少なくない

砂漠の箱庭都市レタイリで年に一度開かれる大演奏会はミキシングワールドでも有数の観光行事となっている

ゼオルーン族はエグゼクト、リザレクトのどちらにも与しない中立の立場を貫いている

双方の指導者も、ゼオルーン族へは干渉しようとする気配は見せず、彼らを政治的な要因で害することを禁止している

彼らは旅の一族であり、一箇所に留まることは無い

物語を語り、各地の話題を伝えて日銭を稼いだあとは何処かへと去っていく

一説には、彼らは情報を広めているのではなく、ミキシングワールドの根幹を揺るがす「あるもの」を探しているとも言われている

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この記事を書いた人

徳島県三好市三野町生まれ
2005年より模型専門誌月間ホビージャパン編集部に所属
プラモデルを作る専門家「プロモデラー」として、公私共に3000体を超えるプラモデルを制作
プラモデル技法書「ガンプラ凄技テクニック」シリーズ6冊を執筆
「誰もが、思い切り自由に作れる作れる模型」をテーマに、ケルバーダインの制作、普及活動に奮闘中

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