ミキシングワールドの住人、ケルバーは1/35に縮小された人類である。ここではケルバーの成立と文化、食事や繁殖など生活様式について解説する
ケルバーの成立
ケルバーは人口爆発と人類の弱体化を解決するために作られた1/35スケールの人体素体である。
小さなミニチュアサイズの体は生存に必要なエネルギーが通常人の1000分の一以下であり、また素体に移入した人間は通常の肉体よりも遥かに運動能力が高かったため、居住地と虚弱化を一挙に解決する方法として、人類はその全てがケルバーに移入し、箱庭のような都市で生活することになったのだ。
移入は人体の脳神経ネットワークをスキャンし、人格情報を抽出してケルバーへとインストールされることで行われる。
ケルバーの大きさ
ケルバーは人類を1/35に縮小したサイズであり、ある程度のばらつきはあるもののほとんどは55~40mmほどの大きさである。
この1/35というサイズに決められた当初は人々を納得させるため、様々な説明がなされた。
人体の意識が集中できる最適のサイズである、初期のケルバーに使われた人口神経が1/35サイズまでしか育たなかった、増えすぎた人類全員を充分な広さを持つ住居に住まわせるにはその大きさが最適であるなど。
だが、現在ではケルバーの開発者であったH・テペーニン博士が愛好していた、旧世紀のプラスチック製組み立て模型においてメジャーであった人形のスケールであること……つまり、個人的な趣味で決定されていたことが明らかになっている。
ケルバーと人体との差異「情報保護ゴーグル」
ケルバーは人体の縮小素体であるため、外見的にはほとんど人間とは変わらない。ただ、目にゴーグルを装着しているのが最大の特徴だ。
このゴーグルは外部の視覚情報からケルバーを保護するためのもの。
人間は外部情報のインプットを視覚に90%頼っており、本質的に情報生命体に近いケルバーは直接外界を視認すると情報のインプット量が多すぎてオーバーフローを起こし、行動不能になってしまうのだ。
ケルバー素体の性質
ケルバーは外見的には人の形をしているが、実は極小のナノマシンの集合体である。
一つ一つのナノマシンが人間の細胞と同じ働きをするため、ミニチュアサイズでありながらスムーズに人体同様の動きが可能であるのだ。
ケルバーの食事
ケルバーの体はナノマシンで構成されている。
このナノマシンは常に劣化、分解しているため、外部から補填用の素材を補給しなければならない。
これは人間同様、食事という形で摂取している。ナノマシンは炭素化合物により構成されているため、炭水化物やタンパク質を体内で変換、合成し、補充されている。
ケルバーの容姿
ケルバーの容姿はさまざまである。
内部の精神年齢や自己認識にも影響されるものの、現在では外見を自由に変更できるスキンプログラムが数多く出回っているため、見た目から年齢や性別がわからないケルバーも多い。
だが、あまりにも外見を頻繁に変更すると情報伝達系のロスが多く体に大きな負担をかけるため、基本、自分のお気に入りの容姿であるか、本来の人格性質に近い容姿を長く採用しているケルバーがほとんどだ。
ケルバーの幼体は人格性質が安定しておらず、外見変更用のスキンプログラムを組み込むと成長に大きな悪影響を受けるため発生から15年以内の使用は好まれていない。
ケルバーの寿命
ケルバーには本来寿命は無かった。
これは人類の居住地問題を解決し、生身の肉体に戻るためには長い時間……少なくとも50年、100年単位の時間が必要であると予想されたため、事故などの物理的に破損した場合を除いて死ぬことは無いように設計されたのである。
だが、ケルバー移入後80年を経過した頃から、肉体の寿命は無限であっても、内部の人間の意識には限界があり、老衰するように停止したり、自死するケルバーが現れたのだ。
ケルバー移入時から何百年も生き続けている肉体世代のケルバーもまだ数多く存在するが、その寿命は決して無限では無い。
ケルバーの繁殖
ケルバーはあくまで人類の仮の体であったので、娯楽のために性行為を行う機能はついていたものの、妊娠や出産などは考えられていなかった。
だが、ケルバー移入時に子供であった世代が成長するにつれ、自らの子を持ちたいという強い望みから、ケルバー素体による繁殖プログラムが密かに制作され、それをインストールされたケルバーは妊娠・出産が可能となった。
人間同様の性行為が行われると、互いの情報が混ざり合い、新たな人格情報の核が生まれる。
この核は母体を構成しているナノマシンを使い、少しずつ肉体を作り上げながら、役10ヶ月をかけて次第に成長していき、出産により外界へと誕生する。
生まれてきた子供は生身の肉体を持たない、ケルバー世代「ケルバージェネレーション(KG)」と呼ばれ、両親の性質を受け継ぎつつも、肉体を持たないことからより情報生命体に近い存在として、親世代では不可能な行動……ケルバーダインへの騎乗などが可能となっている。
なお、ケルバーには性格により男性型、女性型など傾向的な違いはあるものの、人間のように厳密な雌雄の性別は存在せず、交接器は雄型、雌型の両方を備えている個体も多い。
妊娠は女性型に限定されるわけではなく、完全にランダムであり、交接者双方が妊娠してしまうことも多い。
これはKG人口が急速に拡大する原因ともなった。
また、あまりにも気持ちが高揚し、互いへの愛着が強い場合、口唇器の接触による情報交換だけでも、まれに妊娠することが確認されている。
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