ケルバーダイン バテス シェラルド・グペイン搭乗機(AD2360年製)。バトルストーリー第五話『ケルバーダインはよく燃える』

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バテス バトルストーリー(AD2360年『ケルバーダインはよく燃える』)

 

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 夜の闇をうごめく赤い点

 赤く輝く瞳、血塗られたような赤い肩だけが、チラリ、チラリ、と月光に反射して見える

 これが噂の「エグゼクト革命軍」。この付近をしばらく前から荒らし回っているケルバーダイン盗賊団だ

 夜に紛れて姿はよくわからない。だが、我々はグロッフ防衛隊精鋭だ。若いKGの寄せ集めの強盗団など敵ではない

 しかも、こちらの機体はブリアード。数も10機もいる。かつてガットを討滅したケルバーダインへの信頼はもはや信仰の域に達している

 「迎撃!迎撃するんだ!」

 「ダメです!早すぎます」

 「こっちはブリアードだ!速さじゃ負けない!」

 謎のケルバーダインの動きは異常だ

 こちらの動きを事前に察知し、引き、近づき、我々を惑わせる

 「遊んでいるのかああああああああああああ!!!」

 血気盛んなグレコ隊員がGMXホイールの回転数をトップギアに入れ、全力で突撃する

 距離は1メートル

 この距離であれば、ブリアードのダッシュと突撃に対応できるケルバーダインはいない

 ……はずだった

 ごう、と謎のケルバーダインが、グレコのブリアードに赤い揺らぎを吹きかけた

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 「ヴヴォおおおおおおおおおおおおおおおおっ、ひっ、ひいい、火っ!あついあつい、燃える、ぎゅああああああああっ………」

 「火、火だと!そんな、馬鹿な、火を、火を同じケルバーに向けるのか!」

 火だるまになったブリアードは謎のケルバーダインの横をすり抜け、壁に激突して爆発炎上、パーツがいたるところに飛び散り、チリチリと闇夜を照らす灯りとなっている

 炎に照らされ、謎のケルバーダインの姿があらわになる

 その数、3体

 「なんと……禍々しい……」

 黒いボディに血のような赤い肩。刺々しく攻撃的なシルエット。一編たりとも「善」を感じるカケラも無い

 特に中央の機体……これがおそらく敵の隊長機だろう。とんでもなく長大な火砲を胴体に無理やり装着している。こんな武器は今まで見たことがない。

 一瞬、ゼノアイ同士の視線が合った瞬間、相手の心が伝わってきた。全身を寒気が走り、ミキシンクロレートが急上昇する

 「このケルバーダインは俺たちを一人残らず焼き殺す気つもりだ。ヤツには勝てん。みんな、逃げろ!一人でもグロッフに戻って、ヤツの存在を伝えるんだヴァエあえエアああだあああえがあああああああぅ!」

 隊長が撤退を呼びかける前に炎に包まれ、焼け崩れる

 頭を失ったグロッフ防衛隊は混乱の極みに陥り、一つ、また一つと夜を彩る焚き火へと変わっていく

 結局、10体のブリアードが焼けて捻じこけたプラスチックの塊になるまで10分とかからなかった

 

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 「ケルバーダインはよく燃えるね」

 「そうだ。燃える。燃える。燃える燃える燃える。あのときも、燃えて燃えて燃えて燃えてえええええええ!!!」

 「母さん、おちついて!もう大丈夫!もう大丈夫だから!」

 「違う、もっと、まだ、まだ、ラズもエルクはもっと燃えていた、もっと燃やして燃やして燃やさないとみんなが寂しがる寂しがる」

 「バーリンド、鎮静メモリを!急いで!」

 「わかっている。シェラルドさんを早く楽にしてやれ」

 隊長機から強制的にエジェクトした母はもう、あの頃の冷静な母ではない。

 首筋に鎮静メモリを打ち込むと、ようやく動きを止め、眠りに落ちる

 「母さん、おちついてくれ…… ああ、なんでこんなことになったんだ……」

 いつの間にか、夜が白み、朝日が指す。

 3機のバテスを包む、柔らかい光のせいだろうか?

 ほんの少しだけ、「悪そう」ではない、普通のケルバーダインに見えたのは

対ケルバーダイン戦に特化した「バテス」

 バテスは再生構築機界初の「対ケルバーダイン戦闘」を前提として設計されたケルバーダインである

 2350年を過ぎる頃には野生動物驚異が薄まり、爆発的にKG人口が増加。過去を知らない新世代のケルバーによる犯罪や暴動が多発、安定化した再生構築機界は再び揺らぎを見せ始めた

 新たに誕生したKGたちは力を持て余し、太古の旧人類の祖先が弓矢や槍で争ったのと同様に、ケルバーダインの力を同族に向けたのである

 ケルバーダイン同士の戦いが頻発する中で、バテスが登場するのは時代の必然であったのだ

 それではシェラルド・グベインが設計したバテスの構造を見ていこう

動体視力に優れた「開放型ゼノアイ」

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 バテスの特徴である「開放型ゼノアイ」

 外部情報を収取するためのゼノアイを大きく開放し、敵ケルバーダインの動きをより的確に把握可能となっている

 それ以前のケルバーダインは野生動物の攻撃を防ぐことを最優先していたため、ケルバーダイン騎乗時には繊細な感覚器ともなるゼノアイは外部に露出させないのが一般的であった

 開放型ゼノアイは密閉型に比べ確かに防御力は低いものの、「機動力を活かして先制攻撃し、敵の攻撃は回避する」という戦闘スタイルとはマッチしていたのだ

 シェラルドは2340年代後半にはすでに開放型ゼノアイを考案、有用性を説き自作のケルバーダインに一部取り入れていたが、その先進性は長らく受け入れられなかった

禁忌の火炎放射機「KACキャノン」

 バテスは当時のミキシングワールドにおいては禁忌とされていた「火炎放射器」が搭載されていた

 ケルバーダインや箱庭都市は石油系合成樹脂でほとんどが構成されていたため大変火に弱く、一度火事が起こると小さく非力なケルバーたちだけでは鎮火するのは困難であった

 まさか、ケルバーダインに火炎放射器を搭載するとは誰も思っていなかったのである

 これはシェラルドが「プロージェ事件」による逆恨みで工房が襲撃を受けたさい、暴徒化した若いケルバーに火を放たれた経験が反映されたと言われている

 得に隊長機には「KACキャノン」が胴体に搭載されており、1メートルもの遠距離から一方的に攻撃可能であった

量産性を逆手に取った「ブラック&レッドカラー」

 

 バテスの全身はほぼ黒である

 ケルバーダインに使用される旧時代の人類の日用品は透明素材のものが多く、下塗りとして黒が使われるのは基本である

 よって、当時は黒一色というの「手抜き」とされており、騎乗者のRIC効果は低いものだった

 シェラルドはここに1色、赤を加えた

 「赤+黒」は警戒色であり、邪悪な力強さをイメージさせるため、最低限の塗装でRIC効果を強化可能な量産性と性能を兼ね備えた彩色であったのだ

 バテスの圧倒的な強さ、また再現性の容易さとも相まって、この「ブラック&レッドカラー」は以後の再生構築機界に定着することとなった

「エグゼクト」の基礎となったバテス

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 防御重視で動きが鈍く、瞬発力はあっても直線に限定されていた、それまでのケルバーダインとは一線を画し、「機動力・索敵能力・攻撃力・作戦時の連携」と徹底的にケルバーダインを狩ることに特化したバテスはKG武装集団「エグゼクト革命軍」の主力ケルバーダインとなり、各地で数多くのケルバーダインを焼き払った

 「エグゼクト革命軍」は次第に組織化、定着化し、参入者の増加もあり、次第に武闘性が弱まり、新しい都市を開拓する開拓団護衛部隊へと次第に姿を変えていく。

 バテスがもたらした「対ケルバーダイン戦闘」の概念はミキシングワールドを震撼させ、性能の優秀性に加え生産も簡単なことから、バテスはあっという間に再生構築機界に広まることになった。

 現在、エグゼクト地域で使用されているケルバーダインは、このバテスを祖とするものが非常に多い。

 再生構築歴に入ってもモデルチェンジを繰り返しながら愛用され、エグゼクト軍の主力ケルバーダインとして現在でも活躍している

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バテスの再生構築過程と旧設定はこちら

https://promodeler.net/2012/02/15/kdf0102/

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