ケルバーダイン ゲベル・ギチジェット(製造年不明)バトルストーリー第15話「正しいものが生き残る」

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ゲベル・ギチジェットバトルストーリー(MC0040年『正しいものが生き残る』)

臭い。汚い
ここは復活都市リザレクティアの最下層区域。
ミキシングワールド最古の歴史を誇る華やかな上層区域とは裏腹に、ここでは上からの廃棄物をエサに、ギチが大量に繁殖している。

俺の仕事はギチジェット。
毎日、毎日、毎日!ギチをひたすらブチ殺すクソッタレな仕事だ。
一日でも駆除を怠れば、奴らはここから溢れ出す
真っ先に犠牲になるのは俺のような下層区域のスラムに住むジャンクパーツだ

5年前、兄がリザレクト軍に志願し、エグゼクトで戦死したとき
支払われた恩給は、約束の額とはほど遠かった
弟も妹も死んだ

家族で生き残っているのは俺だけだ

「ギチッ!ギチギチギチギチギチッ!」

奴らが一斉に集まってくる

カサカサとした足音
ゆいん、ゆいん、とゆっくり動く長い触覚

ケルバーダインすら食い物に見えているだろう

ギチジェットは簡単な仕事ではない
多くの仲間が死んでいくのを見てきた
1ヶ月持たない者がほとんどだ

ギチは素早い
ヤツらを狩るコツは、いかに動きを封じるか? にかかっている

左腕のZNDインジェクターをギチの群れに向かって狙いを定め、中身を噴射する。
ぶちまけられた接着剤が瞬時に硬化し、数十匹のギチが動きを止める

右腕のELTコンセントで電流を放つ。やつらも所詮は虫だ。
電気はギチの神経系を麻痺させる。

くたばり損ねた奴らの動きが鈍ったところに、背中のBCPランチャーを打ち込む

「ギチッ!ギチ、ギギギッ、ギ………」

BCPランチャーの弾丸から噴射されたガスが、ギチにとどめを刺す
ひっくり返り、しばらくジタバタしたあと、足を縮めて動きが止まった
死んだのだ

回収班がギチの死体を片付けていく
奴らは仲間の死体を食って増える
昔はBCPランチャーで死んだギチを食うと、毒が回って連鎖的にギチを駆除できたらしい
だが、今、もう奴らに毒は効かない
この場所で共食いを続ける間に進化したのだ

そう、共食いだ

3年前、駆除が遅れてギチが下層区域を荒らし回ったとき
妹はギチに襲われてて死んだ
ギチの頭は妹の腹に食い込み、胴体をちぎっても頭は離れなかった
物言わぬ妹を抱えて、泣きわめきながら助けを求める俺を見て、上層のヤツらは笑っていた

「共食いだな。ジャンクもギチも、同じく醜いものよ」

「そもそも、こいつらが生まれてきたことが間違いなんだよ。人間として、正しいものが生き残るんだ」

仕事を終えた仲間のケルバーダインが帰っていく
こんな場所、1秒だって長居したくない
だが、今日は俺は帰らない

ギチの体液でドロドロに汚れたゲベルで、最下層のさらに奥に進む

よくよく見ないと気が付かないぐらい、周りにうず高く堆積したゴミの中に大きな扉がある
もう、だれもこの扉のことを覚えているものなどいないのだろう


ELTコンセントを横のスリットに差し込み、電気を流し込むと、ごう、ごう、とにぶい音を響かせながら、扉が開いていく

その奥には、赤く光る目がいくつも輝いていた

「ご苦労。エグゼクトの同士よ」

扉の奥には、エグゼクト軍のケルバーダインが連なっていた
続々と、進軍してくる

「よくやった。約束どおり、君にエグゼクトの市民権を与えよう。我々が通ってきた通路から脱出するといい」

「ここにいさせてください」

「何故だ?ここは戦場になる。死ぬぞ」

「見たいんですよ。「人間」共がくたばるところを」

ギガセンチネル教が説く「人間の尊厳」など、全く無意味だ
役立たずの人体など、一つ残らず消え去ってしまえばいい。

歪んだ愉悦感に心昂ぶり、ゲベルのミキシンクロレートが上昇するのがわかる

家族も、仲間も死んだが、俺は生き残った
だからこそ、わかる
正しいものが生き残るのではない
生き残ったものが正しいのだ

俺達を嘲笑った上層のヤツラの正当性を、特等席で拝見してやろうじゃないか!

ゲベル・ギチジェット機体解説

ゲベル・ギチジェットは積載能力に優れたケルバーダインである「ゲベル」にギチ駆除用の装備を施した機体である

ケルバーを好んで捕食する肉食ゴキブリであるギチは繁殖率が高く、放置するとあっという間に増殖し、箱庭都市機能を麻痺させてしまう

定期的な駆除はミキシングワールドにおいて、は生存のために必須の行為であるのだ

ギチは元々生命力の高いゴキブリを遺伝子的に強化した生物であるため、大変しぶとい

ゲベル・ギチジェットには対ギチ用の様々な兵器が搭載されている

ZNDインジェクター

ギチは素早く、その動きを捉えるのは難しい
ZNDインジェクターは水分と反応して瞬間的に硬化する接着剤を噴射し、固めて動きを止める兵器である

旧人類の遺跡からは粘着質の床が敷き詰められたギチ駆除用とみられる箱が発掘されており、古代より動きを封じるというのはギチに対峙するものとして効果的であったのだ

ELTコンセント

かつてのゴキブリは寒さに弱かったが、遺伝子改良により寒冷地での適応を得たギチには通用しなくなった
だが、ギチも電撃には耐えられない
ELTコンセントは電撃を発生させる装置である
たとえ即死せずとも、所詮は昆虫であるので、高圧電流が神経に流れると動きが止まってしまうのだ

BCPランチャー

旧人類の居住地から大量に発掘される、ギチ駆除用の設置型毒餌から作られた兵器
内部の対ギチ成分をロケットランチャーとして射出することで、大量のギチをまとめて殲滅することができる

DRSキャップ

ギチと対峙するとき、開放型ゼノアイのケルバーダインだと、隙間に潜り込まれて視界が塞がってしまうことがある
だが、広範囲から迫ってくるギチの位置を把握しておかないと、たとえケルバーダインに騎乗していても生きながら食われてしまうことも少なく無い
これを解決する手段として使われているのがDRSキャップだ

ギチが迫ってくればキャップを閉じてガードすることができるので、臨機応変に戦況に対応できる

だが、キャップの開閉部分の塗装がはがれやすく、RIC効果が下がりやすいのが難点である

RICは「ギチジェットカラー」と呼ばれる、旧人類の遺跡から発掘される害虫駆除用スプレーを模した彩色が施されている。ギチへの攻撃力・防御力が上昇することが確認されているためだ。

リザレクトの国教であるギガセンチネル教では「不信心者はポイポイという地獄に堕ちてギチとなって永遠に共食いしながら苦しむ」という教えがある。

このためリザレクト、特にギガセンチネル教の影響力の強い、王都リザレクティアではギチジェットはきわめて卑しい仕事であるとされており、最下層のカーストに位置するケルバー「ジャンクパーツ」の仕事となっている

駆除作業は過酷な戦いであり、命を落とすものも少なくない

ゲベル・ギチジェットの再生構築過程はこちら

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