ケルバーダイン ゼミカ(MC35年製)バトルストーリー第13話『ギガンテス部隊の昇天』

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ゼミカ バトルストーリー(MC0035年『ギガンテス部隊の昇天』)

暗い、暗い夜
漆黒の中にぽつん、と輝く灯が広がる
よくよく見ると、灯の周りにはまるで蛾が群がるかのように、大勢の人影で蠢いていた。

ここはリザレクト軍の前線基地の「ギガンテス部隊」
明日はエグゼクト首都「エグゼクトシティ」への総攻撃が決行されるのだ。

若いケルバーが、大勢の前で熱弁を振るっている。

「明日、我々は真の人間へと生まれ変わる!アルミリフへの門が開かれるんだ!」彼の眼光は揺るぎない信仰で燃えていた。

周りからは「センチネル!」「センチネル!」とギガセンチネル教の聖句が飛び交っている。

だが、熱狂に沸く彼らの片隅で、ヤズは声もなく震えていた。
明日のことを考えると、恐怖と不安で声が出ない。「
「いやだ…でも、本当に…」
彼の言葉は熱狂に溶けていき、誰にも聞こえない。

ネヴィルは冷ややかに、ひっくり返したLBDボトルの上で演説しているリガを見つめていた。
「これでいい。これで…」
明日の戦いに参加することで、ギガセンチネル教から支払われる恩給があれば、弟や妹たちはしばらく生活していけるだろう。

少し離れたところから、熱狂に沸く集団を見ている男がいた。
彼らにケルバーダインへ乗ることを教えたリザレクト軍の教官だ。
彼はなにも語らない。

世が明けた。
ギガンテス部隊は一斉にケルバーダインに騎乗していく。
人類を否定する悪魔エグゼクトを滅ぼす、新型ケルバーダイン「ゼミカ」に。
頭部のエジェクターが唸りを上げ、まるで天使の輪のような噴煙をあげながら、彼らはエグゼクト軍へ次々と突撃していく

昨夜の決起集会で演説していたリガは「センチネル!」と叫びながら、先陣を切っていた。彼の心は、既にアルミリフにあった。

ヤズは震えながらも、否応なしに突き進んでいた。
「帰りたい、帰りたい、帰りたい…」
だが、そのつぶやきはゼミカ達が突撃する轟音にかき消され、だれの耳にも届くことはなかった。

ネヴィルは弟たちの名前をつぶやきながら、ひたすら前へと進んだ。
「ネヴィン、アルカ、リュム、兄ちゃんが、腹一杯食わせてやるからな…」

「なんだ!あのケルバーダインは!」
エグゼクト軍のパイロット達は地平線を埋め尽くし、常軌を逸したスピードで突撃してくる迫る謎のケルバーダインを見て息を呑んだ。

頭がついている。
まるでケルバーが再び肉体を手に入れたかのような、あまりにも人体に近すぎる姿。
これではミキシンクロレートが高すぎて、15分も活動できないはずだ。
ミキシングワールドの住民なら、誰だってわかる。

全力で追跡を試みるが、ゼミカの動きは予測不可能で、あまりにも俊敏だった。

エグゼクト軍のケルバーダインが、次々と破壊されていく……

戦場を縦横無尽に飛び回るゼミカたちが、次々と光り輝きはじめる
ミキシンクロレートが限界を超えているのだ。
パイロットたちは機体との融合が始まりと、意識が遠のいていく。

リガは空中高く飛び上がり、敵を見下ろしながら熱狂的に叫ぶ。

「これが、我々の力だ!」

ヤズは恍惚としながら、すでにバラバラになっているケルバーダインの胴体をひたすら殴り続けている。

「怖くない!怖くない!もうなんにもこわくない!」

ネヴィルは敵の防衛ラインを突破し、エグゼクトシティの市街地へと飛び込む

「ネヴィン!腹一杯食え!おかわり自由だあああああ!!!!」

戦場に、一生にギガセンチネル教の聖句が響く

「「「センチネル!!!!」」」

爆発が夜を照らす。彼らの信仰は、この世界で最後の輝きを放った。


リザレクト軍の本陣から、ゼミカの輝きを見つめる瞳があった。
「ギガンテス部隊」の教官だ。
彼はなにも語らない。

だが、その悲痛に食いしばった口元からは、一筋の血が流れていた。

この戦いでリザレクト軍は大勝し、エグゼクト首都「エグゼクトシティ」はミキシングワールドの地図からその姿を消したのであった。

ゼミカ機体解説

ゼミカはリザレクト軍が使用する特別攻撃型ケルバーダインである

ケルバーダインの特性として、体型が人体に近づけば近づくほど高性能になる反面、ミキシンクロレートが上昇しやすくなり、騎乗者の活動限界時間が短くなってしまう。

ゼミカは人体に極めて近い形状をしているため、最大でも活動時間は15分と極めて短く、あっという間にミキシンクロレートの上限に到達してまい、パイロットはケルバーダインと融合、自壊してしまう

だが、活動中は高い機動力により、絶大なる戦闘力を発揮する

ゼミカはかつて、「どこまで人体に近いケルバーダインを制作できるか」というテーマで制作された「プロージェ」から発展した

プロージェはミキシンクロレートの高さゆえに融合事故が多発したため、人体のプロポーションから外して使いやすくした「ズーブン」が開発され、ミキシングワールド各地で開拓、作業用に広く普及した

その中で、あえてプロージェをさらに人体に近づけ、ミキシンクロレートを上げるという無謀な試作を試みた機体があったのだ

それがゼミカのプロトタイプである

だが、あまりにも危険すぎるとして、その設計図はリザレクトのケルバーダイン研究所の奥にしまいこまれ、誰の目にも止まることが無かった

その資料をギガセンチネル教の最高指導者、教皇センチネルが発見するまでは

ギガセンチネル教は、ケルバーを生まれてきた姿「いかに純粋な人間の形に近いか?」で階級化し、最上位を「ピュアマテリアル」と呼び、高い地位を与えた

そして、先祖の使った外見変更スキンの遺伝的な影響で、人間には無い特徴を持ったケルバーを「ジャンクパーツ」と呼び、彼らは人であらざる、最下級の存在として酷使された

再生構築歴(mixing century)に入ると外見変更スキンの遺伝的影響が無いケルバーが生まれることはごく少なくなっていたのだ

ピュアマテリアルが生まれるとギガセンチネル教から優遇を受けることができるため、リザレクトではケルバーの人口が爆発的に増加していたのだ

ゼミカのパイロットはこうして生まれた数多くの「ジャンクパーツ」であり、彼らは完全戦争でエグゼクトを一人でも倒し、戦って殉教すれば、天国「アルミリフ」へと生身の肉体を持った人間へと転生できると教え込まれた

ゼミカはMC0035年のエグゼクト殲滅戦で戦場に初投入され、エグゼクト首都「エグゼクトシティ」を粉々に打ち砕いたのである。

ゼミカの再生構築課程はこちら

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この記事を書いた人

徳島県三好市三野町生まれ
2005年より模型専門誌月間ホビージャパン編集部に所属
プラモデルを作る専門家「プロモデラー」として、公私共に3000体を超えるプラモデルを制作
プラモデル技法書「ガンプラ凄技テクニック」シリーズ6冊を執筆
「誰もが、思い切り自由に作れる作れる模型」をテーマに、ケルバーダインの制作、普及活動に奮闘中

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