ケルバーダイン ドルトガ(AD2364年製)バトルストーリー第六話『炎の記憶』

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ドルトガ バトルストーリー(AD2364年『炎の記憶』)

曇り空に鈍く響く火炎放射器の轟音

箱庭都市グロッフ市街地は炎に包まれ、ケルバーたちの絶叫が木霊する。

ケルバーダイン「バテス」の冷酷な赤い眼差しが、生き延びることだけを考えて逃げまどう群衆を見下ろす

その無機質なゼノアイは、搭乗者であるシェラルドの壊れた心同様、狂気に歪んでいた。

「ラ…ズ……、エル…ク…!……アアアア!……ヴアア!!」

かつて炎の中で失った夫と息子の名前を繰り返しながら、シェラルドはバテスでひたすら炎を撒き散らす。

自らが作った火の海の中、彼女の心は過去に戻っていた。

家を焼きつくす炎。炎に崩れ落ちる柱。突き飛ばされた衝撃。焼け焦げてグニャリと曲ったプラスチック。

今なら、今なら助けられる!助ける!たすける、タスケル!

シェラルドが燃え盛る工房の中で苦しむ夫と息子に手を伸ばすたび、現実のバテスから吹き出る炎はその勢いを増していく。

グロッフを防衛するケルバーダイン、ブリアードの部隊がバテスに立ち向かうが、火炎放射器の前に次々と倒れていく。

長大な射程を持つ火炎放射器を凌ぐ射程から攻撃しないかぎり、シェラルドのバテスを止めることはできない。

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「止められなかった……」

右腕に巨大なHTZキャノンを備えた砲撃型ケルバーダイン「ドルトガ」に騎乗したグリトは、炎の化身と化した母の姿に呆然と立ちすくむ

今日は長きにわたるエグゼクト革命軍とグロッフとの交渉が実り、和平が実現した祝として式典が開催されていた。

だが、シェラルドは最後まで和平に反対し、強硬策を主張していた。

あまりに徹底抗戦を求めて暴れるため、鎮静プログラムを打たれて厳重に拘束されていたが、バテスを奪って脱走したのだ。

「グリト、わかるな? お前だけが、シェラルドさんを止められる」

ドルトガを守るように立つ、異形のケルバーダイン、バリゴに騎乗したバーリンドの深い声が響いた。

寡黙な大男だが、大事なときには必ず、本質を付く。

「でも、あれはは母さんだ…バーリンド、わかるだろ?」

「そうだ。あれはお前の母親だ。そして、何百人ものケルバーを焼き尽くした。お前が止めなければ、もっと死ぬ。お前が止めなければ、な」

バテスの全身が赤く輝いている。

炎の照り返しではない。ミキシンクロレートが限界に達し、ケルバーダインの融合と自己破壊のカウントダウンに突入した証だ。

あと10分もすれば、シェラルドは暴走を止め、この世から消えるであろう……だが、その間にも犠牲者は増え続ける。

ドルトガはバテスの格闘機能を抜いた代わりに、遠距離攻撃に特化させたケルバーダインだ。

ドルトガだけが、火炎放射器の射程外からバテスを破壊することができる。

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「母さん…聞いてる? 母さん…もうやめて……」

炎と喧騒にまみれて、隣にいるバーリンドにすら聞こえない、か細い声でグリトは母に懇願する。

だが、震える声とは裏腹に、長大な威力を持つHTZキャノンの照準をバテスに合わせる。

そのとき、バテスのゼノアイから向けられた、強烈な視線をグリトは感じた。

思えば、父と兄を失ったあの炎の一日以来、母が自分のことを……これだけしっかりと見てくれたことがあっただろうか?

「兄さんが助かればよかったのにね…」

ドルトガのHTZキャノンから放たれた高エネルギーの砲弾が、空を裂き、バテスの腹部に突き刺さる。

衝撃波が巻き起こり、シェラルドのバテスは真っ二つに千切れて上半身が空へと舞い上がる。

揺れる視界の中、母の狂気が、無念さが、静かに溶けていく瞬間を、グリトは見つめていた。

ドルトガ 機体解説

ドルトガはシェラルド・グペインが最後に開発した遠距離攻撃に特化したケルバーダインである

シェラルドは暴徒に自宅に火を放たれ、家族を失った経験から、歳を重ねるごとに危険を避けることに異常に執着していった。

長距離射程の火炎放射器「KACキャノン」搭載型のバテスが絶大な攻撃力を発揮したため、さらなる遠距離から、敵を近づけずに一方的に殲滅する攻撃力を求めたのだ。

 ドルトガは2364年当時としては最高級の素材がふんだんに投入されている。

 これは密かにエグゼクト革命軍がハンドレッド型資源採掘遺跡を独自に発見していたためだ。

 シェラルドのバテスに搭載されていた火炎放射器も、旧人類が「チャッカマン」と呼称していた、ハンドレッドからの採掘物資であったことが確認されている。

ドルトガの主武装、KACキャノン

 KACキャノンはドルトガの主武装である、右腕に装着された巨大な2連装砲である。

 2360年代では破格である、最大5メートルの遠距離からエネルギー砲弾を発射、敵ケルバーダインを粉砕することが可能であった。

エグゼクト革命軍の変遷

 シェラルドの創設したエグゼクト革命軍はその活躍と求心力により、当時人口が増大し、都市からあぶれ、貧困や生活苦、親世代に不満を持ち、行き場を失った数多くのケルバーの拠り所となった。

 エグゼクト革命軍の構成員は急増し、戦闘的な組織から次第に若いケルバーたちの互助、保護組織の性格が強くなり、安定したコミュニティへと変化していく。

 エグゼクト革命軍が発見した「ハンドレッド型資源採掘遺跡」から持ち出された資源や、シェラルドの開発した新しいケルバーダインの技術が広がるにつれ、周辺の箱庭都市と経済的、人的な交流が深まっていき、各都市との和睦の道が模索される。

 2364年に、再生構築機界を主導する最大の箱庭都市グロッフとの和平が成立し、式典と祝祭が開催される中、シェラルドのバテスが暴走する事件が発生したのだ。

ドルトガの発展

 ドルトガはバテスの機動力を犠牲にし、遠距離攻撃に特化された、いわばバテスの遠距離砲撃型である。

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 対ケルバーダイン戦闘において重要な役割を担う機体として、モデルチェンジを繰り返しながら再生構築歴に入っても、主にエグゼクト軍で運用されている。

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ドルトガの再生構築過程と旧設定はこちら↓

https://promodeler.net/2013/04/29/kdt1001/

 



 

 

 

 

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この記事を書いた人

徳島県三好市三野町生まれ
2005年より模型専門誌月間ホビージャパン編集部に所属
プラモデルを作る専門家「プロモデラー」として、公私共に3000体を超えるプラモデルを制作
プラモデル技法書「ガンプラ凄技テクニック」シリーズ6冊を執筆
「誰もが、思い切り自由に作れる作れる模型」をテーマに、ケルバーダインの制作、普及活動に奮闘中

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