ケルバーダイン テプーティッシュクバルガ(MC0035年製)バトルストーリー第14話『テプーティッシュ作戦』

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テプーティッシュクバルガ バトルストーリー(MC0035年『テプーティッシュ作戦』)

ティッシュを巻き、テープで止める
もう、どれぐらいこの作業を続けただろうか?
頭がおかしくなりそうだ
何のために?それが全く理解できない。
このハリボテが、あの恐ろしいリザレクトの「頭つき」を欺けるとは到底思えない。

「こんなの、絶対無理だろ…」

隣で作業を手伝っている兵士がぼそっと呟く。
俺も同感だ。俺たちが作るのはただの紙くず。
こんなものが、一体何の役にたつというんだ!

夜が更けていく。俺たちは疲労と絶望でぼろぼろになりながらも、ティッシュで作られたクバルガを並べ続ける。
聞こえるのは、テントと毛布を剥ぎ取られた避難民の泣き声と、もう二度と会えない家族を呼ぶ叫び声だけ。

「もういい加減にしろ!」

とうとう我慢できなくなった兵士の一人がテープの芯を投げながら叫ぶ。

「こんなので何が変わるんだ!」

「変わるんじゃない。お前たちが変えるんだ」

ハリボテ作戦……「テプーティッシュ作戦」の立案者、バーリンド族の族長、ブランゾワが投げられたテープの芯を器用にキャッチしながら答えた。

「「頭つき」の中身はろくに訓練も受けていないジャンク共だ。君の軍歴はどれぐらいかね?」

「5年だ!大総統ゼノヴァの演説を聞いて入隊して、それで、それで、こんな、こんなことが、ああ、ああああ!!!!」

緊張の糸が切れたのだろう。兵士は喚きながら泣き崩れる

「5年だ。あいつらの平均訓練期間は1ヶ月も無い。お前のほうが50倍経験がある」

「いいか、「頭つき」は恐ろしい相手だが、どんなに長くても15分も動けない。戦いもただ突進しているだけだ。」

「少しでも気を反らせればいい。イヴァンダからの援軍が到着するまで粘れば、俺たちの勝ちだ」

不思議だ
旧人類の彫刻のような逞しい体をしたブランゾワが胸を張って激励すると、本当に勝てるような気がしてくる

ギガセンチネル教徒どもが、生身の巨人を崇めている理由が、ほんの少しわかったような気がした

先のことなど、もうどうでもいい
俺たちに今できることは、一体でも多く、ティッシュのクバルガを作ることだ……

夜が明けたその時、地響きのような音が遠くから聞こえてきた。
リザレクト軍の「頭つき」だ。
地平線を埋め尽くす大群で奴らが来る。
エグゼクトシティの惨劇の記憶が見帰り、全員が身を強張らせる。

俺たちが作った紙のクバルガは遠目に見ても、形が変だ。
一応、一番手前に置くヤツだけは丁寧にRICしてある
いくらジャンク共でも、間違うわけが……

「「「「センチネル!!!!!」」」」

ギガセンチネル教の聖句が夜空を裂き、光の線が紙のクバルガを次々と爆破していく。
奴らは、俺たちが作ったハリボテを本物のケルバーダインだと信じているのだ

だが、ハリボテはハリボテ
このままでは想定よりずっと早く、「頭つき」はハリボテを全部破壊してしまうだろう
恐怖で心が凍りつく。

最後のクバルガが吹き飛んだ
「頭つき」は自爆で数を大幅に減らしたが、それでもこちらよりはるかに多い
ヤツらの動きが変わる
騙されたことに気がついたのだ!

猛スピードで「頭つき」がこちらに迫ってくる!

「センチネ……」

と、呪いの言葉を言い切る前に

「頭つき」は突然、南方からの砲撃の命中を受け爆散した

援軍だ!
イヴァンダからの援軍がついに到着したのだ。

彼らの加勢により、リザレクト軍の進行は遂に止まり、俺たち救われた。
俺はひざをついて、空を見上げた。信じられない。

俺たちが作った紙のクバルガは、たとえ少しでも役に立ったのだろうか?
それとも、全ては援軍のおかげだったのか?

どちらにせよ、生きている。
それだけが、今の俺には重要だ。

テプーティッシュクバルガ機体解説

テプーティッシュクバルガは、「ティッシュ」と呼ばれる紙とテープで作られた偽装用デコイである

首都エグゼクトシティの崩壊時、生き残ったエグゼクト軍は壊滅的な被害を受け、大量の住民を南部へと早急に避難させる必要に迫られた

南進しながらも、あと1日でエグゼクト第二の都市イヴァンダよりの救援が到着するというとき、リザレクト軍ギガンテス部隊の追撃がすぐそこまで迫っていることが判明した

ここで、リザレクト軍の「ギガンテス部隊」の注意を惹きつける作戦として立案されたのが「テプーティッシュ作戦」である

「ティッシュ」とは旧人類の遺跡から大量に発掘される薄い紙である。
エグゼクトシティからの避難民のテントや寝具用に使われており、これでケルバーダインの姿を模したハリボテを大量に作り、囮として利用するというものである。

「テプーティッシュ作戦」を立案したのは当時エグゼクトシティに立ち寄っていた、エグゼクト10氏族の1つであるバーリンド族の族長ブランゾワであった。
彼の父がかつて、紙で作られたケルバーダインに騎乗していたのをヒントにしたものである

モデルにはエグゼクト地域でよく使われていたケルバーダイン「クバルガ」が選ばれた。
単純にティッシュで形を作りやすかったためである。

再生構築は作業効率を最優先するため、接着に時間がかかるゼノダインは使われず、テープのみが使われた。

「テプーティッシュ作戦」を言い渡された兵士たちはいくらなんでもティッシュとテープだけで作った模造品にリザレクト軍に騙されるわけはない、と懐疑的だった。

だが、エグゼクト殲滅戦で大量投入されたゼミカのパイロットのほとんどが若く、練度の低いケルバーであったため、彼らは大量に並べられたテプーティッシュクバルガを本物のケルバーダインと誤認して突撃、15分の活動時間を使い果たし、自爆していった

「テプーティッシュ作戦」による時間稼ぎは成功、イヴァンダからの援軍の到着により、エグゼクトの避難民は窮地を乗り超えることができた

作戦の立案者であったブランゾワはゼミカの爆発に巻き込まれて戦死している

テプーティッシュクバルガの再生構築過程はこちら

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