ケルバーダイン バテスMX30 (MC30年製)バトルストーリー第12話『エグゼクト統一宣言』

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バテスMX30 バトルストーリー(MC30年『エグゼクト統一宣言』)

果てしなく続いた、エグゼクト部族間の戦いは一人の英雄の出現により終結した
ぜノヴァ・エグゼクス……今日は彼がエグゼクト終生大総統に就任する、記念の式典が華々しく開催されている

希少なY1000型LBDボトルを重ねて作られた高い壇上の下には、何百機ものケルバーダインが厳格な陣形を成して屹立している
黒く塗られた全身に、血のように赤い肩。
かつてのエグゼクト革命軍が用いた「バテス」の最新型だ

バテスの傍らには志に満ちたエグゼクトの兵士が胸を張り、その周りにはぜノヴァをひと目見ようと何万ものケルバーたちが集まり、喧騒が渦巻いている

壇上に、ぜノヴァが漆黒の鎧を纏った巨影として現れた。フルフェイスの兜の中心に、エグゼクト国旗を模したゴーグルが赤く、蘭蘭と光を放ちながら輝いている

長きに渡り分断されていたエグゼクトは、今や彼の揺るぎない意志の下、高く掲げられた一つの旗のもとに統一されていた

ぜノヴァが高く手を掲げると、あれほど騒がしかった会場が一瞬で静けさを取り戻す
彼は、深く、低く、だがミキシングワールドの隅々まで浸透するような声で、静かに語りだした

「ここに集まった我が同胞、エグゼクトのケルバーたちよ。
我々が今、立つこの地は、新たなエグゼクトの心臓部であり、新しい時代の象徴だ。
醜き肉親同士の戦いは終わり、今や我々の手によって統一された。だが、これはただの始まりに過ぎない。我々の真の敵は別の所に存在しているからだ」

「昔話をしよう。肉体を持つ巨人たちが争いを繰り広げていた時代よりも古の時代。
この星に原初の生命が生まれた。最初の生物は周りの栄養をただ取り込むだけで生きながらえていた。
だが、そこに変化が生まれた。目を持つ者が現れたのだ。
目があれば、食物を見つけることができ、より優位に立てる。
そして歯が生まれた。歯を持ったものは他の生物を捕食し、さらに優位になった。
生物の進化は止まらない。背骨を備えてより早く泳ぐ魚が新たな覇者となり、陸へ上がった生物は変化を繰り返しながら新たな世界を開拓していく」

「我々の祖先である人類は、かつては住処を追い出された落語者であったという。彼らは知恵を生みだした。
過ぎ去る瞬間を保存し、情報を蓄え、それを子孫に伝えていく。
何百、何千、何万もの世代の中で、知恵という階段を積み上げ、1個の生命の寿命だけでは到達できない高みに達した。
地球の全てを支配し、生命の頂点に達した」

「だが、その人類も滅んだ。初めて目を持った生物が、初めて歯を持った生物が、初めて背骨を持った生物がミキシングワールドのどこにも残っていないように。
これは何を意味するか?諸君らはどう思う?」

ぜノヴァのゴーグルが強く輝く
それに呼応して、何百機ものバテスのゼノアイも赤く輝き、会場が赤い光に満ちる

「そう、生命と環境は常に変化を続けている。新たな生命が生まれ、環境を改変し、その環境に適応した新世代が生まれる。
原初の生命にとって有害であった酸素が地球に満ちたとき、それをエネルギーとする生物が生まれたように。
そう、旧世代は決して新世代に勝つことはできない。進化の針は進むことはあれ、決して戻ることはない。針を戻そうとした者は全てこの世界から姿を消す……絶滅する運命にあるのだ」

「我々ケルバーは人類が作った情報を元に生まれた、新世代だ。
肉体の枷を超え、自由に姿を変えることができる我々の存在は、生命の新たな境地を示すものだ。
我らが生み出したケルバーダインを見よ!あれはただの機械ではない。
我々はケルバーダインに同一化し、第2の肉体として、自由自在に扱うことができる。
我らの体を形作るのは流れる情報だ。器に入った水のようにどんな形にも姿を変えることができる
これは旧人類には決して出来なかったことだ」

ぜノヴァの姿が変わっていく。子供、女性、男性……ケルバーはスキンで見た目を変更できる。だが、スキン定着には通常数日から数ヶ月を要する。普通のケルバーであれば、これほどの瞬時にめまぐるしく姿を変えたら内部情報が混濁し、あっという間に人格が崩壊してしまうだろう

その異常ともいえる行い、ぜノヴァの能力に驚いた数万のケルバー達のざわつき、どよめきが広がっていく

ゼノヴァは姿を変え続け、最後に老人の姿になった。ケルバーなら誰でも知っている、テペーニン博士の姿だ

「我々がこれをなし得るのはなぜか? それは我々が新たる進化を歩んでいる証だからだ
 だがこの進化の針を巻き戻し、ケルバーを滅びの道に引きずり込もうとしている者たちがいる。
 そう、リザレクトだ」

「彼らは古き肉体への回帰を夢見る退廃した存在だ。
そもそも、我々KG同士がなぜ肉親同士で争わなければなかったのか?
それはリザレクトの首魁たる、肉体に縛られた旧人類時代の生き残りが、我々KGを追放したからだ」

「とうの昔に夢と散った肉体を維持するためだけに、彼らがどれだけ大量の資源をつぎ込んでいることか、諸君らは知っているか?
旧人類の肉体を一日維持する資源があれば、10000人のケルバーが成人できるのだ」

「かつてKG人口が増大したとき、人類の肉体の維持よりKGを優先していれば、世界はこうはならなかった。
二度と起きる見込みがない老人のために、子供を殺す。それがリザレクトの本質だ。
ミキシングワールドの祖、テペーニン博士はどんなことがあっても息子であるゼリックを見放すことはなかった。
リザレクトはこの世界の創造主の意思に反しているのだ!」

ぜノヴァの姿が戻る。そして、一瞬の沈黙を置き、より強く、深い情念を込めた声で語りだす

リザレクトとギガセンチネル教を野放しにすれば、彼らは死体に黄金を注ぎ続け、ミキシングワールドの全てを食いつぶし、我々は絶滅するだろう

諸君らは絶滅したいか? 私は嫌だ。
私は諸君らと共に生きていきたい

私、エグゼクト大総統ぜノヴァ・エグゼクスはここに宣言する

リザレクトを殲滅すると!

ミキシングワールドに残存している全ての旧人類の肉体を滅し、この世界を真なる意味でケルバーの楽園にすると!

彼らが過去にしがみつく一方で、我々は未来へと進む。リザレクトとの戦いは、ただの戦争ではない。これは生存競争だ。和睦も融和も無い。敗者は滅び、勝者のみが生き延びることができる

我々の戦いは、生命が次のステップへと進むための必然だ。旧人類の肉体が全て消えたとき、我々ケルバーは真なる意味で完璧な存在となるだろう。前進せよ、エグゼクトのケルバーたちよ!ミキシングワールドは我々ケルバーの世界だ!」

バテスが腕を天に掲げ、一斉に祝砲を上げる

「エグゼクト!エグゼクト!エグゼクト!」

観衆は熱狂し、エグゼクトコールが絶え間なく続く

ぜノヴァは高く腕を掲げ、聴衆に答える

だが、歓喜に湧く会場の中、ぜノヴァのゴーグルに覆い隠された、彼の深い悲しみを知るものは誰もいなかった……

バテスMX30機体解説

バテスMX30はエグゼクト軍の主力ケルバーダインである。

エグゼクト統一戦争に勝利した大総統ぜノヴァは大規模なエグゼクト軍再編を行った。

そこで大きな課題となったのがエグゼクト各氏族ごとのケルバーダイン互換性の低さであった。

氏族や地域ごとにあまりにも多くのバリエーションがあり、協力して運用するとなると、整備や再生産に多大なコストがかかることが問題となったのだ。

そこでエグゼクト勢力圏で広く普及していたバテスをベースに機体の構造規格を統一し、より量産製や互換性の高い新たな主力ケルバーダインを設計することになった。

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これがMX30型バテスである。

単騎での性能は当時のケルバーダインとして飛び抜けたものはないが、生産性・互換性・拡張性に優れており、どの氏族員でもすぐ扱えるように操作性にも配慮されていた。

バテスMX30はMC30年のエグゼクト統一宣言で初公開され、ぜノヴァの演説により新たなエグゼクトの象徴として広く受け入れられた。

個性を尊重する風潮の高いエグゼクト地域の再生構築士(ミキシングビルダー)には当初不評であったが、カスタマイズのベース機として優れていることが周知されると、またたく間に受け入れられた。

開発後10年以上たったMC41年時点でも、エグゼクト軍の主力機として、「完全戦争」の前線で常に戦いを繰り広げている。

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